映画「ワンダーウーマン」感想、塹壕シーンが素晴らしすぎる










Blu-ray&DVDのリリース日が決定・予約開始(2017/10/27)
「ワンダーウーマン」Blu-ray&DVDの発売日が12月2日に決定!


「ワンダーウーマン」の感想




*ネタバレ含む


ヒーローのオリジン映画として面白い作品だった。ラスボス登場の仕方とラストバトルはイマイチだったが、終盤までの内容がこの上なく良い。ダイアナ・プリンス/ワンダーウーマンがヒーローとして初めての行動を起こす塹壕のシーンがヒーローとしてのやさしさに満ち溢れ、弾が激しく飛び交う中を進むヒロイックな姿がとても印象に残る。

アクションは一部を除き面白いかった。ワンダーウーマンの近接や縄を使ったアクション、アマゾン族VSドイツ軍では銃に対して自分たちの技量で立ち向かうアマゾン族の姿やそのアクションがカッコイイ。タンクを強烈にひっくり返すワンダーウーマン流ちゃぶ台返しはスクリーンで見ると迫力のある映像になっていた。しかしCGIで残念な所がある。戦闘中のワンダーウーマンのCGIが浮いたように感じる箇所があり、周りが実写に対してワンダーウーマンだけゲームの映像といった感じで動き、面白いのだけれどもCGIと実写の映像に一体感を感じられない箇所があった。

キャラクターではダイアナ、アマゾン族、スティーブ、仲間たちがどんな人物なのかが上手く説明されていたと思う。悪役ではマル博士は不気味な容姿やスティーブとの会話シーン等で印象に残るように描かれていた。しかし、他のヴィランが上手くいけていないように感じた。ルーデンドルフは単なる残酷タイプの悪役に思え、アレスは「ずっとお前探しをしていたのにそんな登場かよ。」と思い、初めに紹介された設定以上の面白い要素もないように感じ残念だった。

この作品はDCコミックスの映画シリーズDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)である。「バットマンVSスーパーマン(BvS)」で触れられなかったアマゾン族という種族、そしてDCEUには例えではない神がいるという設定をこの映画で追加した。まだイースターエッグを調べていないが、これまでの作品との繋がりは集合写真のみだったように思える。この映画で何が良くなかったのかを考えると、その理由の1つにユニバース作品なのに繋がりがほとんど見いだせないのが挙げられる。(ちなみにアマゾン族は11月公開の「ジャスティス・リーグ」に再び登場する。)

この映画を初めて見て僕が感じた良い所と悪い所をさらっと書くとこんな感じです。完璧ではないが、しかし塹壕シーン、「ノーマンズランドでの戦い」とでも言おうか、そこが他のヒーロー映画にはない素晴らしさがあったので良い作品として印象に残る。


この映画で良かった所と悪かった所


最高に良かった所


塹壕から村の開放までがとにかく良かった。中でも塹壕の梯子を登るワンダーウーマンの姿が良い。

人間達の間で起きている戦争は戦争の神アレスを倒せば終わるものと、ダイアナ/ワンダーウーマンはアメリカの諜報員スティーブ・トレバーと共に故郷を離れ人間の世界、ロンドンへ行く。

ロンドンでは人間社会の考え方や文化の違い、女性の扱われ方を体験する。

ダイアナはスティーブが手に入れた情報「毒ガスによる大量殺戮」はアレスによるものとしアレス探し、大量殺害を食い止めたいスティーブや仲間たちと共にベルギーへ向かう。

途中スティーブの導きにより、負傷し苦しむ兵隊達から悲惨さや戦争の非情さをダイアナは知る。そして、たどり着いた塹壕の中でドイツ軍に占領され暴力に怯え苦しむ村の女性の言葉を聞き、その村をドイツ軍から解放するため立ち上がる。

ここが一番素晴らしかった。ここまでのストーリーで描かれた内容が上手く作用している。

女性の村までの道のり(地帯、ノーマンズランド)はドイツ軍による砲撃や銃撃が凄まじく、兵士たちも命の危険から突破を試みない。しかしダイアナはスティーブが制止する中、助けを求める願いを叶えるべく自ら先陣を切り、砲火を浴びながら進む。突破が無理だとされていた地帯でダイアナが変えたその状況、ピンチになったダイアナの姿にスティーブや仲間が立ち上がり、やがてその場にいた兵士達も彼らに続き、進めなかった地帯を突破。そしてダイアナ達は村に入りドイツ軍を蹴散らし村を解放する。

塹壕から村の解放までの戦いはダイアナがヒーローとして行ったの初仕事であると思う。少し前まで平和のためにアレスを倒す事しか考えていなかったダイアナが道中で戦争の悲惨さを知り、弱き人々のために立ち上がるために塹壕の梯子を登るシーンはダイアナの変化や弱い人々を救いたいと思うやさしさが強く出ていた。

この梯子を登る直前に女性の服装から戦闘スタイルに変わる。戦闘する姿にチェンジするのはこれから戦うという意味以外に、男性の領域である戦場で「この時代での女性はこうだ」という1つの現れである服装を捨てる事により、常識を払ったという意味もあるのだろうと思った。戦争は男の領域という考え方があるこの時代で男が恐れる場所へ女性であるダイアナが一歩一歩梯子を登り、厳しい戦場に立つという勇敢な姿も印象深い。「変える力・できる力のある者が困っている人々を助けよう」というメッセージをダイアナを通して描きたいんだなと感じた。



良かったキャラクター


・スティーブとアンティオペ
アンティオペは序盤でダイアナを引っ張っていく上で重要なキャラクター。人間の世界ではスティーブがそれに当たる。前半のスティーブはダイアナをロンドンへ導き人間の世界と社会を紹介する役割をもつキャラクター。物語が進むに従い、ダイアナとの距離を縮め、ダイアナにいい影響を与えていく。ダイアナを魅力的なキャラクターへと成長させるのに成功させたこの2人が強く印象に残る。





・ダイアナ/ワンダーウーマン
ガル・ガドットの表情が面白い。初めて男を見た時の興味深そうな表情や恋する女性の表情が「BvS」にはなかった表情でよかった。「BvS」とは違い感情に富んだワンダーウーマンもいい感じ。子供時代のダイアナも「ワンパクなこの子がどう成長するのだろう」と興味を引きつける。子供時代のダイアナと母であるヒッポリタ、叔母であるアンティオペのやり取りを見て、「初めから面白くできているなあ」と感じた。「BvS」でダイアナはクールな女性であったが、そうなった理由がこの映画で説明されていないのは残念。





・マル博士
スティーブの会話シーンで「結局、人は才能よりも顔かい」という誰にでも共感できる一面を博士を通して描かれていたのがとても良い。容姿の不気味さが他の悪役2人よりも特徴を際立たせている。ラストバトルでも役割をもっているので、この映画において強く印象に残るヴィランであった。ルーデンドルフとのある行動が残酷だが、子供向けアニメの悪役が悪巧みを行っているみたいで面白い。しかし、顔についてのエピソードは上手く紹介されていなかったように思える。




良かったアクションシーン



・アマゾン族対ドイツ兵が一番強く印象に残る。岸壁に縄を打ち込み攻撃を開始するアイデアやアンティオペやダイアナの母ヒッポリタの戦う凛々しい姿が良い。それまでに訓練を行っているシーンがあり、アマゾン族の訓練の成果をここで見る事ができる。初めに描かれたセミッシラの様子が上手くいかせていると思った。

・ダイアナでは特に縄を使ったアクションに「こんな爽快感のあるゲームやりたいな」と思った。




悪かった所


・アレス、ダイアナ、ラストバトル
ダイアナはアレスと思ったルーデンドルフを殺すが、戦争が終わらない事に戸惑う中、突然登場するのは違和感がある。ロンドンへ来てからアレス探しをやっていて、こんな登場とガッカリ。ここまでの時間はなんだったんだろうと思った。もっと劇的な登場を楽しみにしていた。またアレス自体が初めの段階でどういう神かの説明はあるが、紹介された設定以上に面白いキャラクターではなかったように思える。

ラストバトルのバトルシーンはこれまで動きまくっていた戦闘とは違う。アレスの能力がX-Menのマグニートのように物を操って遠距離で攻める能力のため、ダイアナがそれに耐え抜くシーンが多い。そこまではそういう能力だからで良いのだが、圧倒的に相手が勝っているといったような戦闘で盛り上げるピンチの状況がないというのが残念だった。アレスの突進技も超スローでカッコ悪い。スピードのない格闘ゲーム見ているようだ。見ている側に「あれだけ距離があり、あのスピードでは余裕で対応できる。」という安心感を与えていると思った。アレスへの最後の一撃は「尺がないからこうした」という作品を見せられているようで面白くなく、演出もカッコイイとは思えなかった。

ダイアナもおかしい。アレスの攻撃を受けてもそんなにダメージを受けた様子はない。最初のアマゾン族VSドイツ軍で銃で簡単に死んでしまうという緊張感を与えて、ここまで必死に銃弾をダイアナが弾いてきたのは何だったんだろうと思った。ピンチの状況を感じない上、ラストバトルでダイアナの見た目に痛々しい演出がなかったため、アレスを強く感じさせないマイナス効果があったように思える。「BvS」でのドゥームズデイ戦は激しい物だった。そこでワンダーウーマンは過去にも化け物と戦ったという内容を話しているが、アレスからは全くその様子を感じられなかった。ドゥームズデイの方が強敵だったと思える。激しいラストバトルは「ワンダーウーマン2」が決まっているので次に期待したい。

ラストバトルは悪い事ばかりではない。そこで描かれるダイアナとスティーブのドラマはとても味わい深い。戦闘ではなくダイアナやスティーブのセリフや表情に注目して見る方がラストバトルを楽しめるのかもしれない。




今気づいた事

カメオのザックを探し忘れた


本当にいるのだろうか?村の開放までの展開がとても良かったので探すのを忘れる。イースターエッグを調べていないので映画にザックが本当にいるか、今の僕にはわからない。



続報
「ワンダーウーマン」にカメオ出演時のザック・スナイダーをとらえた撮影現場写真



「村の解放」までは楽しめた。10点満点中7.0~8.0。


*誤字・脱字訂正、一部消去